こんにちは編集スタッフのQです。
2025年も残り数日になってきました。今年も音楽界はじめスポーツ、芸能など、いろんな分野で偉大な先人が旅立たれていかれました。新しい年を迎える前に、あらためてそんな巨星たちに追悼の思いを捧げたいと思います。
今回ご紹介するのは今年1月に亡くなられた映画監督デイヴィッド・リンチのインタビュー本『映画作家が自身を語る デイビッド・リンチ』(原題 LYMCH ON LYNCH、フィルムアート社)。インディペンデント・プロデューサー、監督、ライターでもあるクリス・ロドリーがリンチに対して、その生い立ちから作品製作の裏側までを徹底的にインタビューしたものです。1999年発行の初版では初期作品から「ロストハイウェイ」まで。のちに加筆、改訂編集され「マルホランド・ドライブ」までを収録したバージョンもありますが、私が読んだのは前者になります。
鬼才、カルトの帝王などと称されたリンチですが、その名が一般に広く知れ渡った作品というと、1990年にアメリカのABCで放映された連続ドラマ「ツイン・ピークス」でしょう。かくいう私も、当時どハマりし、レンタルビデオ店を何軒もハシゴして(日本ではWOWOWで放送してましたが、私の記憶では多くの方がレンタルビデオで見ていた印象)、最新話が借りられないか探し歩いたものです。
カナダとの国境に近いツイン・ピークスという街で起こった女子高生殺人事件。それを捜査するFBI捜査官デイル・クーパー(カイル・マクラクラン)が街に乗り込むことから露わになる街や住民たちの闇、裏側。そしてここがリンチの真骨頂なんですが、単に殺人犯を追うミステリーだけじゃなく、人間の業、二面性、物事の裏表などが、宇宙やUFO、時にパラレルワールド的な視点を交えーーつまりは何だかよくわからない感じでーー描かれていきます。
そしてリンチといえば音楽です。作品の世界観を描く上でサントラに異常なまでにこだわる監督として有名で「ツイン・ピークス」でも残響が印象的で浮遊するような音楽(Floting Musicとも評された)が謎めいたストーリーをより盛り立てていましたね。この「ツイン・ピークス」はもちろん、リンチの初期作品「ブルーベルベット」、カンヌでパルム・ドールを受賞した「ワイルド・アット・ハート」、「ロスト・ハイウェイ」、「ストレイト・ストーリー」、「マルホランド・ドライブ」と一連のリンチ作品で音楽を手掛けているのがアンジェロ・バダラメンティ。リンチの盟友ともいえる作曲家です。リンチは本書『映画作家が自身を語る デイヴィッド・リンチ』の中でふたりの関係を「彼とは波長がばっちり合っている」と評しています。リンチがイメージを語り、バダラメンティがそれを受け取って曲にする。時には先に映像ができていたり、また一緒に演奏したりしながらと、その音楽製作スタイルはさまざまだったようで、本書ではそんなリンチ作品における音楽づくりについても端々に話題に出てきます。
アンジェロ・バダラメンティは2022年12月に逝去。となるとリンチとの最後の作品づくりは2017年に製作された、「ツイン・ピークス リミテッド・イベント・シリーズ」(ツイン・ピークス・リターンズとも呼ばれる)になるのでしょうか。この作品がまた強烈で、昔のツイン・ピークスの答え合わせを期待してた視聴者を見透かすように、リンチは我々をさらに深い迷宮に誘ってくれました。
今回、あらためてこの本を読んで思ったんです。「そりゃあ、わかりやすい答え合わせなんかしてくれるわけないよな」と。
たとえば本書にあるこんなくだり
「人が説明を求める気持ちはわからないでもないけど、誰もが同じことを語りすぎていると思わないかい?そもそもあることがどんなふうに起こったかなんて説明するなんて不可能なんだ」
私なりにこれを解釈すると「言葉で説明できないから映画撮ってんだろ」ってことではないかと。
だから最後に誤解を恐れずに書きますね。
あなたの作品を言葉にするのはすごく難しいです、わからないことが多すぎて。でも自分なりに感じとりはしました。
それで良いんですよねデイヴィッド?









