湯河原から世界のギターメーカーへPART-2(連載インタビュー/木越ギター)

黄金時代のギターを多数所有した 木越さんの青年期

「黄金時代のギターを多数所有した 木越さんの青年期」

お話:木越貴之さん(木越ギター代表))
聞き手:江尻大作(プログラマー/facebook・ジャズギター研究会 会長))

“50年代を始めとした色々な年代のストラトやレスポールなど、50本以上を所有し、解体に明け暮れた日々”

木越: 1950年代のストラトなど「ゴールデンエラ」と言われている時代のいいやつがありましてね。
僕も50本くらい、レスポールとかいっぱい持ってた時期があるんですよ。
それらを分解して、ネックを外して、ネックを作り直して、付け替えてとか、
いろいろやってた時代があります。

江尻: へぇ、それはいつごろですか?

木越: サラリーマン時代。

江尻: あ、じゃあ、その後に家具職人の時代があって、ギター制作をやる遥か前の。

木越: うん、遥か前の。

江尻: そういうことやってたんですね。

木越: それで、あ、だいたいこういうもんだな、ってのが分かって来たんです。

江尻: 僕ね、記事にするかは置いておいて、なんでそれをやってたのかすごく興味があるんです。

木越: ま、趣味ですね。

江尻: 音の秘密みたいなのを解明したかった、とか。

木越: いや、暇だったから (笑)

江尻: でも、解明したかったんでしょう?

木越: いや、ほんと暇だったからですよ、木工が好きだったし。

江尻: なるほど、単に木工が好きだったんだ?

木越: それと、20歳ぐらいで、ギターの演奏を一回あきらめた頃、ギターと木材を集め出したんですよ。

江尻: それは何でですか?

木越: 趣味。

江尻: 木が好きだったとか?

木越: そう、木が好きだったんです、とにかく。

江尻: じゃあ、こういうの(目の前の無垢のテーブル)を見ると、もう萌えてたわけですね (笑)

木越: 萌えてたわけ (笑)

江尻: 木目とかも好きだったんですか?

木越: 最初は木目から入ったんだけども、叩いて、ああ、音が千差万別なんだなぁ、って思ったり。
同じ樹種であっても、叩くと音が違う、響きが違う、何故なんだろう?とか思ってました。
同じ一本の無垢の角材から半分に切っても、音が違うんですよ。

江尻: 場所によって?

木越: そう、場所によって。

江尻: (生育している)木って太い・細い部分や、高い・低い部分があるわけじゃないですか?
木越さん的に、どの部分が良い音がする、っていうのはなんとなくあるわけですか?

木越: まあ、どうでしょうね。

江尻: やはり叩いてみないとわからないもんなんですか?

木越: はい、叩いてみないとわからないですね、僕は。

江尻: じゃあ、傾向として、この部分よりもあの部分がどういう音がするとか、そういうのはないわけですか。

木越: ないです、ないです。叩いて良ければいいわけです。
ただし、前提条件があって、目が詰まっててしっかりしたものでないと、良いものはない。
ギュってなってないと、響きは良くないんですよ。

江尻: それって、必然的に、重くなります?

木越: いや、軽いのもあるし、重いのもあるし。

江尻: 密度が高くても、軽いのがあるんだ?

木越: はい、軽いのもありますね。密度、、、うんまあ、密度っていうことなんでしょうね。

江尻: じゃあ、木の種類によって作り方を変えて、いいギターにするっていう感じなのか、それとも、狙った木を仕入れに行くっていう感じですか?

木越: 狙った木を使うっていうことでしょうね。
実際は二通りあって、「この音が欲しいから、この木を使うんだよ」っていうのと、「この木はこの音がするから、こういう風に作る」というパターン。

江尻: どんな木でも、良い音が狙えるって言ってる人も、聞いたことあるんですけど。木越さんはそれとはおそらく対極ですよね。

木越: うん、全く違うと思う。
どんな木でも狙った音になるっていうのは、もう、僕から言わせると、神の領域ですから。
僕の場合は、例えばお客様が「こういった音欲しいんですけど」といった場合、それに近しい音を作ることはできるけど「どんな木であってもそれに近づける」ということは、絶対に不可能。

江尻: そこに近づけるというか、その木が持ってる中でのいい音を作るって意味だと思うんですけどね。

木越: はいはいはい。

江尻: でも、今の話を聞くとやっぱり、木越トーンっていうのがあって、それを狙うための木材を選びから始めるって感じですよね。

木越: そうそう。そういうことなんです

江尻: それが、色んなギタリストが言ってる、どこのポイントも、さっき言った「モケない」とか?

木越: モケないで出てくる。

江尻: それを、色んな人が言っているのは聞いてて。よっしー(松原慶史さん/ギタリスト)もそうだし、矢堀さん(矢堀孝一/ギタリスト)も言ってるし。
だから、僕のイメージでは、試奏したり、矢堀さんが「これ良いんだよ?」って言ってるのを聞いて、弾いてみた人がみんなどんどん買っていくじゃないですか。
きっとみんなそこ(モケない木越トーン)を理解して「いいなこれ」ってなってるのを感じますね。

湯河原から世界のギターメーカーへ PART-1


木越ギター

2011年創業。抜けが良く、太くまろやかなクリーントーンに定評のある、神奈川県湯河原のギターメーカー。
経験とセンスに裏打ちされた、独自の「音を聴きながら削る」工法で製作された楽器は多くのギタリストの支持を得ている。

website : https://www.kigoshi-guitar.com/

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